パウロは「教会建て上げ」をどのように考えていたのだろうか。
Ⅰ οἰκοδομέω（オイコドメオー）
パウロが使った言葉で「建て上げる」という意味を持つのはοἰκοδομέω（オイコドメオー）である。オイコドメーという動詞は新約聖書で４１回使われており、Thayerの辞書では以下のように分類されている。
a . 〈properly正確な意味〉, to build (up from the foundation) 建てる（土台から）:ルカ11:48, the builders 建てる人:マタイ21:42, to restore by building 建てることで修復する,to rebuild 建て直す,repair 修理する:マタイ26:61, マルコ15:29
b . 〈metaphorically比喩的な意味〉, to found 設立する:マタイ16:18, to promote growth in Christian wisdom, affection, grace, virtue, holiness, blessedness クリスチャンの知恵、愛、恵、善、聖さ、祝福の成長を促進すること:使徒20:32,Ⅰコリント8:1,10:23,Ⅰテサロニケ5:11, to grow in wisdom, piety,知恵において、敬虔において成長すること:使徒9:31,Ⅰコリント14:17
このように、オイコドメオーという言葉は「建てる」をその根本に持っている。また、比喩的にクリスチャンの人格的「建て上げ」にも使われる。名詞のοἰκοδομή（オイコドメー）は「建てること」「造り上げること」という意味で、こちらも霊的に人を「建て上げること」という意味を持っている。
Ⅱ パウロの教会オイコドメー（建て上げ）
パウロは動詞「オイコドメオー」を9回（ローマ15:20,Ⅰコリント8:1;10,10:23,14:4〈2回ある〉,14:17,ガラテヤ2:18,Ⅰテサロニケ5:11,）、名詞「オイコドメー」を15回（ローマ14:19,15:2,Ⅰコリント3:9,14:3;5;12;26,Ⅱコリント5:1,10:8,12:19,13:10,エペソ2:21,4:12;16;29）使っている。これらの使用例からパウロが考えていた「教会建て上げ」について考察する。
１．神の建物の土台－それを据えるのは誰か
パウロはコリント人への手紙で教会を神の建物（オイコドメー）と例え（Ⅰコリント3:9）、その土台を賢い建築家のように据えたと言っている（Ⅰコリント3:10）。そして、その土台とはイエス・キリストであると語っている（Ⅰコリント3:11）。パウロの教会建て上げの一番最初のプロセスは未伝地へ赴き、イエス・キリストの福音を宣べ伝えることであった（ローマ15:20）。そのようにしてパウロは教会にイエス・キリストという土台を据えた。パウロがそうであったように、今日の教会でも地区教会から派遣された宣教師が教会の土台を据える。
２．神の建物の構造－それを形造るのは誰か
土台を据えたあと、パウロは何をしたか。パウロは信徒たちを整える働きを担う牧師達を選んだ。この建物を組み立てるステップはパウロの教会建て上げのプロセスで常に存在した（使徒14:23）。パウロと同じように、今日の教会でも地区教会から派遣された宣教師が牧師たちを選ぶ。
３．神の建物の完成－完成へと建て上げるのは誰か
パウロはキリストを土台に据え、信徒たちを整える働きを担う牧師達を組み立てて、その働きを主に委ねた。しかし、パウロはそれで満足していない。それは、教会建て上げの完成ではなかった。パウロは自分が形成した教会へ手紙を書くのも、再訪するのも、教会建て上げ（オイコドメー）のためであったと言っているからだ（Ⅱコリント12:19,13:10）。パウロは常に発展途上の神の建物を言っていて、完成に向かって建て上げるように命令している。パウロは神のことばに基づいた秩序ある交わりが教会を建て上げると言っている（Ⅰコリント14:26;40）。信徒たちが励ましあうことが教会を建て上げると言っている（Ⅰテサロニケ5:11）。そして、パウロは信徒たちをそのように整え、奉仕させるのは牧師たちの役割であると言っている（エペソ4:11-12）。牧師たちが信徒たちを整えて奉仕の働きをさせることで神の建物は正しく建て上がっていくのである。
今日の教会でも、パウロのような宣教師によって立てられた牧師たちが信徒たちを整えて奉仕の働きをさせることで神の建物が完成へと建て上がっていく。牧師たちはみことばによって信徒たちを整える（使徒20:28～32）。また、パウロが自らが選んだ牧師たちに必要なフォローをしていたように、今日の宣教師も教会の土台を据え、牧師たちを選んだ後は、必要に応じてフォローしていく。
